万が一のその後に備えて
万が一のその後に備えて

年齢を重ねるにつれ、物忘れが増えたり、判断力に自信がなくなったりするのは自然なことです。しかし、それが認知症によるものであった場合、ご自身の財産管理や介護の手続きなど、今後の生活をどう守っていくかが大きな課題となります。
「もし認知症になって、自分で自分のことが決められなくなったら……?」
こうした「万が一」の事態に直面したとき、ご家族や専門家が法的な権限を持ってサポートする仕組みが「成年後見制度」です。

本記事では、認知症が疑われる、あるいは進行してしまった場合に、私たちがどのようなサポートを提供しているのか、軽度・重度それぞれの具体的な事例を交えてご紹介します。
Q.もし認知症になったら?
A. 私たちは以下のようなサポートで、ご本人の権利と生活をお守りします。

- 家庭裁判所への申立てサポート: 複雑な手続きのご相談窓口となり、必要に応じて弁護士や司法書士が書類作成を行います。
- 後見人等の引き受け: ご本人の状況に合わせ、成年後見人・保佐人・補助人として責任を持って就任します。
- 財産管理: 大切な預金通帳、証書、実印などを安全にお預かりし、厳重に管理します。
- 身上保護: 状況に合った施設探しから、見学同行、入所手続、利用料の支払いなど必要な作業を全面支援します。
- 医療・介護連携: 介護スタッフや主治医と密に連絡をとり、ご本人の健康状態や生活状況を常に把握します。
- 不動産・家財の整理: 空き家となったご自宅の管理や、家庭裁判所の許可を得た上での売却、残った家財の処分などを行います。
- ご親族へのサポート: ご家族が後見人等に就任された場合の実務的なアドバイスやお手伝いも行います。

【サポート事例1:軽度認知症の場合】
悪徳商法の被害を防ぎ、安全な暮らしを守る「補助」の活用
※この事例は複数の事例を組み合わせて構成したものであり、実際の名称や年齢、地名等は異なります。
モデルケース M代さんの場合(78歳・女性・一人暮らし)

M代さんは数年前に夫を見送り、現在は都内の自宅で一人暮らしをしています。
ある日、大阪に住んでいる長男のT也さんが様子を見に実家を訪れると、使った形跡のない高価な健康器具やサプリメントの箱が部屋の隅に山積みになっていました。驚いたT也さんが尋ねると、M代さんは「よく覚えてないけど、私の健康を親身になって心配してくれる人がいて、その人から買ったのよ」と答えました。どうやら、悪質な訪問販売のターゲットにされてしまったようです。
T也さんは母親の今後の生活が非常に心配になり、「成年後見制度を利用して財産を守った方がいいのではないか」と提案しました。M代さんも、「最近物忘れがひどくて、自分でも買い物の金銭感覚がおかしいと思うことがあるの。守ってくれる制度があるなら安心ね」と利用に同意してくれました。
後見@JAPANの対応

主治医の診断を受けた結果、M代さんは「日常的な買い物などは問題ないが、高額な契約など難しい判断には誰かの支援が必要」ということで、「補助」に相当すると判断されました。
そこでT也さんは、家庭裁判所へM代さんの「補助開始の申立て」を行うと同時に、特定の契約行為に対する「同意権付与の申立て」を行いました。これにより、万が一M代さんが再び悪徳商法に騙されて契約してしまっても、補助人が法的にその契約を取り消すことができるようになります。
しかし、T也さんは遠方の大阪に住んでおり、頻繁に実家へ通って補助人の業務をこなすのは困難でした。そのため、信頼できる第三者機関として『後見@JAPAN』に「補助人」の候補者になってもらうよう依頼しました。
家庭裁判所の審判により、後見@JAPANがM代さんの補助人に選任され、担当者の「後見花子」がサポートを開始しました。数ヶ月が経つ頃には、花子さんは何度もM代さんの自宅を訪問し、一緒にテレビを見ながらお茶を飲むなど、すっかり打ち解けた関係を築いていました。
ある日、花子さんが訪問すると、部屋に新しくて大きなマッサージチェアが置かれていました。M代さんが高額な買い物をしたようです。
花子さんが事情を聞くと、M代さんは「最近足腰が痛くてね。近所の電気屋さんで試したらすごく気持ちよかったから、自分の貯金で買ったのよ」と嬉しそうに話しました。
補助人である後見@JAPANは、事前に同意していない高額な契約を取り消す権利を持っています。しかし花子さんは、今回は悪徳業者に騙されたわけではなく、M代さん自身の明確な意思による買い物であること、そして家計から見ても支払いに問題がないことを確認し、この売買契約は取り消さずに認めるのがご本人の生活の質を高めると判断しました。
その後

M代さんは、これまで通り自分らしい生活を楽しみながらも、万が一悪徳商法の被害に遭ったり、判断力が鈍って不要な契約をしてしまったりした場合には、補助人が契約を取り消してくれるという強力な「お守り」を手に入れ、安心して毎日を過ごせるようになりました。
【サポート事例2:重度認知症の場合】
ご自宅の売却と施設入所を通じた、穏やかな生活環境の再建
※この事例は複数の事例を組み合わせて構成したものであり、実際の名称や年齢、地名等は異なります。
モデルケース G蔵さんの場合(83歳・男性・一人暮らし)

G蔵さんは身寄りがなく、郊外の戸建て住宅で介護ヘルパーの支援を受けながら一人暮らしをしていました。
ある冬の日、自宅の浴室で滑って転倒し、大腿骨を骨折してそのまま入院することになりました。数ヶ月の入院治療で骨の治療は終わりましたが、リハビリが思うように進まず、自力で歩くことが難しくなってしまいました。
病院からは退院を求められましたが、車椅子での生活となったG蔵さんが、段差の多い古い自宅へ戻って一人で暮らすことは不可能です。さらに、長引く入院生活の影響でG蔵さんの認知機能は急速に低下し、「早く仕事に行かなきゃ」と繰り返すなど、記憶の混乱が見られるようになりました。
医療ソーシャルワーカーは介護施設への入所を勧めましたが、G蔵さんは「家に帰る」の一点張りで、ご自身で今後の生活について正常な判断を下し、契約を結べる状態ではありませんでした。そこで、身寄りのないG蔵さんが安全な環境へ移るための手続きと財産管理を担うため、「成年後見制度」を利用することになりました。
後見@JAPANの対応

家庭裁判所から「成年後見人」に選任された『後見@JAPAN』の担当者である「後見太郎」さんは、すぐに病院へ赴きG蔵さんと面会しました。退院後の希望を聞き取ろうとしましたが、G蔵さんはやはり「家に帰る」と繰り返すだけで、在宅復帰が物理的に困難であることを理解していただくのは難しい状況でした。
太郎さんはソーシャルワーカーと密に連携し、退院後のG蔵さんにとって最も適しているのは、医療ケアとリハビリを集中的に受けられる「介護老人保健施設(老健)」であると判断。後見人としての権限で病院の退院と老健の入所手続きを進めました。
老健での新しい生活が始まると、病院ではベッドに寝たきりだったG蔵さんが、スタッフから頻繁に声をかけられるうちに、食堂で食事をとるようになりました。少しずつレクリエーションにも参加するようになり、リハビリの成果もあって、介助なしで車椅子を操作して施設内を移動できるまでに回復しました。
G蔵さんが老健で穏やかに過ごしている間、太郎さんは老健退所後の「終の棲家(ついのすみか)」についての準備を進めました。G蔵さんの年金と預貯金だけでは有料老人ホームの費用を払い続けるのが困難でしたが、誰も住む予定のない自宅を売却すれば、まとまった資金を確保できます。
太郎さんは家庭裁判所に「居住用不動産処分の許可申立て」を行い、厳格な審査を経て許可を得た上で、自宅の売却手続きを完了させました。
不動産の売却で得た資金と将来の支出のバランスを計算し、予算内で100歳まで安心して暮らせる有料老人ホームを複数ピックアップ。G蔵さんと一緒に見学に赴き、本人が最も気に入った施設と入所契約を結びました。
その後

現在、G蔵さんは新しい有料老人ホームで手厚い介護を受けながら暮らしています。施設には立派な日本庭園があり、「ここの庭は眺めがいいんだよ」と、車椅子で毎日のように庭園の散歩に出かけるのを楽しみにしており、見違えるほど落ち着いた充実した日々を過ごされています。







